健診で選べるMRI検査の違い

~DWIBS・腹部MRI(MRCP含む)・骨盤MRIをわかりやすく解説~

当院の健診では、より精密に体の状態を確認できる画像検査として、DWIBS(ドゥイブス)腹部MRI(MRCP含む)骨盤MRIを導入しています。
いずれも放射線を使わず、安全に体の内部を詳しく確認できる検査です。

それぞれの特徴や得意分野、注意点を理解することで、ご自身の目的に合った検査を選ぶことができます。
特に当院では、DWIBSは胸腹骨盤部をまとめて効率よく確認でき、短時間で終了するためおすすめの健診検査の一つです。

DWIBS(ドゥイブス)とは

DWIBS(Diffusion-Weighted Imaging with Background Body Signal Suppression)は、MRIの一種で、胸部・腹部・骨盤部をまとめて撮影できる検査です。
体内の水分子の動きを画像化し、腫瘍や炎症など「細胞密度の高い部分」を強調して描出します。

  • 検査時間は約30分程度
  • 広範囲を効率的に確認できるわりに短時間で終了
  • 放射線被ばくがなく、造影剤も不要

がんリスクの広範スクリーニングとしておすすめの検査です。

DWIBSのメリット

  • 胸部から骨盤部までを一度に撮影できる
  • 放射線被ばくなし
  • 造影剤不要(アレルギーや腎機能への負担が少ない)
  • がん・炎症などを広くスクリーニングできる
  • 広い範囲を短時間で確認可能(約30分)

DWIBSのデメリット

  • 小さな病変や細部の描出は専用MRIに劣ることがある
  • 呼吸や体動の影響で画像がぶれやすい

🔍 DWIBSが苦手とする臓器・病変の傾向

DWIBSはMRIの原理上、体内の水分子の動きを検出し、細胞密度が高い部分を強調して描出します。
そのため、構造や環境によっては苦手とする臓器・病変があります。以下に代表的な例を挙げます。

① 肺(空気を多く含む臓器)

DWIBSはMRIの原理上、水分子の動きを検出します。そのため、空気を多く含む肺は信号が得られにくく、肺がんや肺結節の検出には不向きです。
肺の評価には胸部CTが圧倒的に優れています。
(※当院ではDWIBSに低線量胸部CT検査が標準で組み込まれています)

理由:

  • 肺は空気が主体のため水分子の拡散信号が少ない
  • 呼吸による動きの影響を受けやすく画像がぶれやすい

② 脳(頭蓋内)

脳のMRIには専用の撮影(T1・T2・FLAIRなど)が必要であり、DWIBSでは病変の位置や性状を十分に評価できません。

理由:

  • 当院では撮像範囲の設定外
  • 脳内構造の細部描出に適したシーケンスではない

③ 消化管(胃・小腸・大腸)

胃や腸などの消化管は、内容物や蠕動運動(ぜんどう)の影響で信号が不安定になります。
そのため、粘膜面の微細な変化や早期がんの検出には不向きです。
これらは内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)での評価が最も正確です。

理由:

  • 腸の動き(体動)によりアーチファクト(画像の乱れ)が発生することがある
  • 消化管内の空気が信号を妨げる

④ 骨(特に骨皮質や骨の中の微小変化)

DWIBSは骨の内部(骨髄)の変化はある程度捉えられますが、骨皮質(硬い部分)や骨表面の小さな変化には弱い傾向があります。
骨転移などのスクリーニングには有用ですが、骨折や初期の骨変化を評価するにはCTや専用MRIが適しています。

理由:

  • MRI信号が硬い骨には届きにくい
  • 微小な構造変化はCTの方が得意

⑤ 小さな臓器・微小病変

DWIBSは広範囲をカバーできる反面、解像度は臓器専用MRIより低くなります。
そのため、数mm程度の小さな病変や、膵臓・副腎・甲状腺などの小臓器の詳細な観察は苦手です。

理由:

  • 撮像範囲を広く取るため、空間分解能が下がる
  • 背景信号除去の過程で小病変が見えにくくなる

DWIBSはこんな方におすすめ

  • がんや炎症などを広くスクリーニングしたい方
  • 被ばくのない方法で検査を受けたい方
  • 短時間で胸腹骨盤部を広く確認したい方

腹部MRI(MRCP含む)とは

腹部MRIは、肝臓・胆のう・膵臓・腎臓などの腹部臓器を高精細に撮影できる検査です。
さらに、MRCP(胆管・膵管撮影)を含むことで、胆管や膵管の形態も確認できます。
DWIBSよりも局所的に詳しい情報を得ることができ、腫瘍や炎症、脂肪肝、胆石などの診断に優れています。

  • 検査時間は約30分程度
  • 放射線を使わず、体にやさしい

腹部MRIのメリット

  • 腹部臓器を高解像度で詳細に描出できる
  • MRCPで胆管・膵管も評価可能
  • 被ばくなし

腹部MRIのデメリット

  • 小さな病変や動きの影響で描出がやや難しい場合がある

腹部MRIはこんな方におすすめ

  • 肝臓や膵臓などの異常を詳しく調べたい方
  • MRCPで胆管や膵管の評価を希望する方

骨盤MRIとは

骨盤MRIは、子宮・卵巣・前立腺・膀胱などの骨盤内臓器を高精度に描出する検査です。
婦人科疾患(子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣腫瘍など)や、前立腺がん、膀胱の異常を早期に発見できます。

  • 検査時間は約30分程度
  • 放射線なし

骨盤MRIのメリット

  • 被ばくがない
  • 軟部組織の描出に優れる
  • 婦人科・泌尿器疾患の早期発見に有効

骨盤MRIのデメリット

  • 小さな病変は描出が難しい場合がある

骨盤MRIはこんな方におすすめ

  • 婦人科疾患(子宮筋腫・卵巣腫瘍など)のリスクを調べたい方
  • 前立腺がんや膀胱の異常が気になる方
  • 下腹部の違和感がある方

検査比較表

検査名主な対象部位放射線被ばく主な特徴主なメリット
DWIBS(胸腹骨盤部)胸部・腹部・骨盤部なし広範囲を効率よく撮影短時間(約30分)で広範囲確認・造影剤不要
腹部MRI(MRCP含む)肝臓・胆のう・膵臓・腎臓・胆管・膵管なし局所の質的診断に優れる高精細・胆管・膵管も評価可能
骨盤MRI子宮・卵巣・前立腺・膀胱なし軟部組織の描出に優れる婦人科・泌尿器疾患に有効

まとめ:目的に合わせた検査選びを

DWIBS・腹部MRI(MRCP含む)・骨盤MRIはいずれも放射線を使用せず、安全に体の内部を確認できる検査です。

  • 広くスクリーニングしたい方 → DWIBS(短時間で胸腹骨盤を効率よく確認)
  • 肝臓や膵臓、胆管・膵管を詳しく調べたい方 → 腹部MRI(MRCP含む)
  • 婦人科・泌尿器系を詳しく調べたい方 → 骨盤MRI

それぞれの特徴を理解し、目的に合わせた最適な検査を選ぶことで、より精度の高い健診が可能になります。
検査内容や組み合わせについては、当院スタッフまでお気軽にご相談ください。

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